危険な地名 漢字や読みに見る災害関連の地形地名

災害の危険を示す地名一覧

地名は先人たちが命名したものであり、土地の記憶でもある。
例えば△△の屋敷跡、新しく開拓した田、街道筋、都市部の職人町等々は、見るだけでそれと分かりやすい。
危険と云われる地名の場合は、砂地である、崖がある、水が出やすいなどと云った地形的な意味を持った地名のうちで災害が起きやすいものと言えるだろう。

毎年のように起こる浸水、洪水、崖崩れに地震による津波や液状化など、現在でもこれらを想起させる地名が全国に残っている。
そこで、各研究、書籍、WEB上で見られる危険な地名を一覧化しておき、今後の地名調査の参考になればと集めてみた。

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災害に注意したい危険な地名一覧

地名の研究は地理学、歴史学、民俗学他多方面からの研究が進められており、以下のリスト内の各語彙も使用されているからと云って、この漢字や読みの全てが危険というわけではないことに注意していただきたい。
また、地形にもよるため、○○地域と云う大きな範囲で見るよりは、大字から小字へとより小さな地名で見るのがより正確でもある。

※地名には発音及び使用漢字には時間的な揺れがあることに注意。
※同じ漢字や読みでも、地域毎に地形的な意味合いが異なることもある。

読み 漢字の例 備考・実例等
アイ 合・相・会・英 水・水害関連地名。谷間、川の合流点など、「間(アイ)」、「合(アウ)」の意より。湿地、低地などを意味する事も。街道の合流箇所、分岐点などでも使用される。
アオ(オウ) 地名の例、青木、扇沢。「アオ」は扇状地を意味する場合がある。扇状地は過去に起きた土石流などで形成された土地。青木は「アオキ」「オウギ」と読まれ、神戸市東灘区青木は扇状地に位置。’10年7月には長野県小県郡青木村で土砂災害が発生。
アカ 古語及び四国などで「水」を意味する。『アケ』、『アク』も類例。
アサ 朝、浅、麻、阿佐 土砂・地崩れ関連地名。崖崩れ、地崩れ土砂によってできた所。「アズ」の転訛と云う。
アシ 芦・足 水辺の植物に由来すると思われる地名。低湿地の可能性が高い。
アユ 地震・土砂関連。「揺く(あゆ・く、あよ・く)」に由来があると考えられる。軟弱な地盤を意味することがあり、地震災害が大きくなる箇所。
アラ 荒・嵐  
アリ  
アワ 粟、淡、阿波 土砂・地崩れ関連地名。地崩れ、地滑り等の発生する所。「アバケル(崩壊する)」の転訛と云う。
イケ 水・水害関連地名。水汲み場、水路、池。
イタ 板・潮来・井田・伊丹  
イナ 稲・伊奈・猪名 水・水害関連地名。井戸・水路・河川を意味する「ヰ(イ)」と、土地を意味する「ナ」とも云う。
イヌ 土砂・地崩れ関連地名。狭い、小さい、低い。山の場合は崖、地崩れなど。
イモ  
ウキ 宇喜・浮 水・水害関連地名。泥深い所、低湿地。
ウシ・ウス 牛・臼 水・土砂関連地名。「憂シ」より不安定な土地。地滑り崩壊地。洪水氾濫地。
ウメ 「埋め(ウ・メ)」に由来。かつて土砂崩れが起きた場所に多く、砂が堆積した土地の可能性が高い。山間部や山際では急傾斜や崖の確認をし、該当する場合は過去の崩壊を示唆。地盤が弱い人工的な埋め立て地の可能性もある。たとえば、大阪の梅田は淀川河口の湿地帯を埋め立てた土地。
ウラ 水・水害関連地名。入り江、浜辺、水辺など、川の氾濫や降水で水害を出す土地。
水・水害関連地名。川、水のある所。曲がりくねった川や大地を彫り込んだ地形を指す。
オイ 水・水害関連地名。岸辺が風化して崩壊しやすい川。
オガ 男鹿・小川  
オギ 「穿(ウ・グ)」に由来とされ、上代は「うく」で、意味は、穴があく。くぼむ。また、出っぱったものが欠け落ちる。崖などの地形や災害が発生し荒れた場所を意味することがある。
オシ 水・土砂関連地名。地滑り地。洪水時の堤防決壊地。
オチ 土砂・地崩れ関連地名。地滑り地に見られると。
オナ 「男波(おなみ)」に由来とされ、荒々しい波を意味する。津波の影響があった地の可能性がある。
オリ  
カキ 柿・垣 水・土砂関連地名。「掻く(カ・ク)」、「欠く(カ・ク)」に由来とされ、崩れやすい崖地帯の可能性がある。河川の氾濫や津波による崩壊ちの場合も。地滑り地。洪水氾濫地。
カナ 土砂・地崩れ関連地名。傾斜地、崩壊地を云う。
カニ 「掻く(カ・ク)」と「薙ぐ(ナ・グ)」を組み合わせたとも言う。地域にもよるがこれは「カナ=鹿鳴、他」に見られることが多いのではと思う。素直に蟹のように横歩きやへばり付いて歩く様な箇所に多く、九十九折の越路や峠にみられ、浸食によって土地が剥落しやすい箇所でもある。
カマ 釜・鎌 水・水害関連地名。「釜・鎌」の湾曲部の印象で良く、水が溜まりやすい箇所である。えぐられた箇所や海辺の急深箇所も言い、深みで溺れたり、壁面の崩れに危険がある。流水で浸食され釜型になった淵。洪水の決壊箇所などに多い。
カメ 「噛み(カ・ミ)」に由来とされ、水などが土や岩を大きく抉る意味。浸食されて陥没した地形。’04年の新潟中越地震では新潟県長岡市の虫亀で地すべりが起きている。
カモ 鴨・加茂 水・水害関連地名。蒲の茂る湿地、カマの転訛か。河川沿いの氾濫原であった所。
キヅ 木津 土砂・地崩れ関連地名。地崩れ地、「疵(キズ)」よりと云う。
キリ  
クサ 「腐る(クサ・ル)」に由来する崩壊地形や「臭し(クサ・シ)」からの硫黄臭のある土地を言う事がある。
クボ 窪・久保 水・水害関連地名。周囲より窪んだ低地をあらわす。地盤が弱く、水がたまりやすい。特に降雨時、水のたまる窪地。
クマ 久万・球磨・熊  
クラ 倉・蔵 土砂・地崩れ関連地名。「刳る(ク・ル)」や「崩(クユ)」に由来するとされる。山中の切り立った岩盤や断崖などの崩れやすい土地。
クリ 土砂・地崩れ関連地名。「刳る(ク・ル)」や「崩(クユ)」に由来すると。’47年のカスリーン台風では、埼玉県久喜市の栗橋地域で浸水。1707年の宝永地震では香川県高松市の八栗山で大規模な斜面崩壊が発生した。
クロ 地名の例、黒川、黒石。「クロ」は古語で「削られた」「抉られた」という意味がある。崖地や急傾斜地に当たる場合は豪雨の際に崩壊の可能性が。河川沿いでは過去の氾濫を表すこともある。’17年7月の九州北部豪雨では、福岡県朝倉市黒川で浸水、土砂災害の被害。
クワ 土砂・地崩れ関連地名。崩れやすい土地。
コマ 「転(コロ)」と「間(マ)」を組み合わせたものか。輪状に川に囲まれた場所で洪水の多発地帯。
サキ・サギ 崎・鷺 土砂・地崩れ関連地名。「裂く(サ・ク)」や「割く(サ・ク)」に由来する崩れ別れるという意味と。裂かれた場所、つまり大きく開かれた地形をいう。
サクラ 桜・佐倉 土砂・地崩れ関連地名。「狭(サ)」と「刳る(ク・ル)」を組み合わせた用語という。抉れた土地、山間部では主に豪雨で崩れやすい土地。谷地形。崩壊・浸食地形。
サル 猿・去 土砂・地崩れ関連地名。「去る(サ・ル)」、「曝る(サ・ル)」に由来すると、「ズレル」→「ザレル」→「サル」とも。崖地などで外気に曝されて崩れやすくなった場所を指す。地崩れ地。
シギ  
シバ 柴、芝 水・水害関連地名。洪水時に冠水する場所。
ジャ 水・土砂関連地名。土砂の流出地。洪水氾濫地。
ジャクズレ 蛇崩 川岸や崖などの斜面の土砂が緩んで崩れそうな場所、「ジャホウ」とも読むことも。
ジャヌケ 蛇抜 大雨などで土砂崩れが起きる可能性の高い場所、もしくは土砂崩れ自体を蛇抜(ジャヌケ)とも呼ぶ。
スキ・スギ 周枳・須木・杉 水・土砂関連地名。「削キ(スキ)」より地滑り地。堤防決壊地。
ソネ 曽根 水・水害関連地名。伏流水が洪水時に湧き出すこともある水害地名。
過去に農耕地だった場所を埋め立てている。ほかに「新田」「野」「原」「稲」などの漢字が使われている場合もある。
タカ 水・土砂関連地名。「滾ル(タギル)」より水が激しく流れる所。地崩れ地。急傾斜地。
タキ 滝・多喜・多気・多木 「滾る(タギ・ル)」に由来すると。水が激しく流れることで、浸食作用が盛んな絶壁や崖を指す。
チャウス 茶臼 土砂・地崩れ関連地名。「打ツ」、「叩ク」より浸食の意味。地滑り地。
ツキ 土砂・地崩れ関連地名。「剥ク(スク)」より地滑り地。
ツバキ 椿 土地が浸食された崖地や崩壊した地形、刈り取るという意味からとも。ツバキはツバケル、凸凹を意味する言葉がなまったものとも。土佐弁などでは「つばける」は水中に入れる、また「つばかる」は、(水やお湯に)浸かる、漬かるという意味もある。
ツル 鶴・水流・都留・釣 水・土砂関連地名。都留(ツル)と書く地名も多い。水路のある低地で、鶴の首のように川が湾曲した場所で、洪水が起こりやすい土地。また地滑り地の例もあると。東京都世田谷区弦巻は、過去にゲリラ豪雨で浸水。令和元年東日本台風では、宮城県黒川郡大和町の鶴巣地区で浸水被害が。
トイ 戸井、土肥、都井 土砂・地崩れ関連地名。「崩ル(ドエル)」より崩壊地形。
トリ  
ナエ 土砂・地崩れ関連地名。「萎エル」より土が崩れやすい状態。地滑り地。
ナギ 那岐・薙  
ナタ・ナダ 奈多・名田・灘 水・土砂関連地名。「傾(ナダレ)」に由来すると。傾斜地や川の流れが早く、荒れていて不安定な場所の意味も。波立つところの意味で水路の難所。「崩(ナダ)レ」より崩壊傾斜地。
ナベ 水・土砂関連地名。窪地、滑りやすい土地や流れ。
ナミ 波・浪  
ナメ 水・土砂関連地名。滑りやすい土地や流れ。地形地名の意の方が強いと思う。
ニシ・ニジ 西・虹 土砂・地崩れ関連地名。西が日没方向を示すことより、沈む、消えるなど土地の状態。「ニジリ」より崩壊地名。
ヌキ・ヌギ 貫・抜・塗木 土砂・地崩れ関連地名。山抜け(土石流)の後、崩れた土の堆積地。地滑り地。
ノゲ 野毛 「抜け(ヌケ)」や「除け(ノケ)」に由来と。岩石の崩壊地や崖などの危険な地形で、地滑りが起きやすい。
ノダ 野田 水・水害関連地名。氾濫河川の水害地、河川氾濫時代の扇状地に多い。
ハギ 水・土砂関連地名。「剥ぐ(ハグ)」に由来する。斜面の表面が剥がれ落ち、斜面の崩壊地を指したり、土砂崩れがあったことを暗示させる。また、ハガ(芳賀、羽賀)、ハク(伯)、ハコ(箱)なども類似地名で「ホキ(崖)」の転訛、崩壊地と云う。たとえば東京都足立区の保木間は斜面に位置する。
ハタ  
ハナ 放・花 「放つ」は取り払う、壊すという意味。沼沢地から大量の水を放ちだす場所と。
フクロ 水に囲まれた袋状の地形をあらわす。堤防決壊や越水した際に浸水しやすい土地をいう。
フスマ 「狭間(ハザマ)」や「伏す」に由来し、低地のため水が流れ込む土地。地下水が多い浸食地のこともある。
マイ 米・舞  
マヤ 迷・眉・摩耶  
ミドリ 埋め立て地や造成地をあらわすことがある。新しく造られた住宅地などの地名で見かけることもある。
ミノ 美濃・箕面・三野 水・水害関連地名。洪水時に水の溜まる氾濫地。「ミ」は水、「ノ」は処と云う。
ムギ 麦・牟岐・武儀 土砂・地崩れ関連地名。「剥キ(ムキ)」より地崩れ地。
八・矢  
ヤギ 八木  
ヤシキ 屋敷  
ヤス 安、野洲、夜須 水・水害関連地名。湿地に近い砂礫地で、降雨時に浸水の危険がある土地。
ユイ 由比、油井 土砂・地崩れ関連地名。「ユ」は揺、「イ」は比で、割れ目。地滑り前兆としての亀裂。地滑り地。
リュウ 龍・竜 水・土砂関連地名。水神である龍が暴れたように、過去に激しい豪雨や津波などの災害に襲われたことがある地域。洪水、土石流。
ワシ 地名の例、鷲尾、尾鷲。「ワシ」は古語で「速く進む」の意味。「鷲」がつく字は土砂災害の危険を示す地名に多いが、川沿いであれば急流を意味する。’19年10月に千葉県で死者13人を出した大雨で、茂原市鷲巣地区などが川の氾濫で浸水被害に遭っている。
ワダ 和田・和多 河川等の曲がる所にある洪水地。
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