名瀑・名滝を「日本の滝百選」に見る

日本の名瀑百選 安の滝

日本には古くから「名滝」や「名瀑」と称される滝があり、書画や和歌に地誌などでも遺され人々に景勝として親しまれてきた。
また、滝自体が本尊として崇められ信仰の対象として地域に根付き、名称にも修験道・仏教関連との結びつきが多いという歴史文化的な特徴も有している。

昭和60年(1985年)に環境庁(現・環境省)が名水百選を選定したが、これ以降官公庁や民間団体による選定作業を伴う「○○百選」選びは、観光地及び地域振興も目的にして一気に増加した。
この好況下の平成2年(1990年)に、緑の文明学会、グリーンルネッサンス、緑の地球防衛基金の3団体が、森林浴の森百選に続くグリーンキャンペーンの一環として企画し選定したのがこの「日本の滝百選」、後援は環境庁(現・環境省)と林野庁。

8人の選考委員により全国から応募(34万1292通)のあった527滝から127滝へと絞り込まれ、最終選考で100の滝が選ばれた。
これを都道府県別に見ると、最多選定は北海道の6カ所、次点は岐阜県、奈良県、兵庫県、熊本県、大分県、宮崎県からそれぞれ4カ所、一方で千葉県、香川県、福岡県からの選定はない。

ここでは「日本の滝百選」を北から地域別・都道府県別に紹介していく。
「日本百名滝」や「日本百名瀑」とよばれることもある。

スポンサーリンク

北海道地方日本の滝百選一覧

名称(読み)所在地備考
羽衣の滝(はごろものたき)北海道上川郡東川町落差270m
インクラの滝(インクラのたき)北海道白老郡白老町落差約44m
飛竜賀老の滝(ひりゅうがろうのたき)北海道島牧郡島牧村賀老落差70m
流星・銀河の滝(りゅうせい・ぎんがのたき)北海道上川郡上川町落差 90m (流星)、104m (銀河)
アシリベツの滝(アシリベツのたき)北海道札幌市南区落差26m
オシンコシンの滝(オシンコシンのたき)北海道斜里郡斜里町落差50m

東北地方日本の滝百選一覧

名称(読み)所在地備考
くろくまの滝(くろくまのたき)青森県西津軽郡鰺ヶ沢町一ツ森町落差85m
松見の滝(まつみのたき)青森県十和田市奥瀬字黄瀬国有林内落差90m
不動の滝(ふどうのたき)岩手県八幡平市高畑落差15m
秋保大滝(あきうおおたき)宮城県仙台市太白区秋保町馬場字大滝落差55m、日本三大名瀑※1
三階の滝(さんかいのたき)宮城県刈田郡蔵王町落差181m
七滝(ななたき)秋田県鹿角郡小坂町上向字藤原落差60m
茶釜の滝(ちゃがまのたき)秋田県鹿角市八幡平地区落差100m、三大難攻滝※2
法体の滝(ほったいのたき)秋田県由利本荘市落差57.4m
安の滝(やすのたき)秋田県北秋田市阿仁打当落差90m
滑川大滝(なめがわおおたき)山形県米沢市大字大沢落差80m、※3
白糸の滝(しらいとのたき)山形県最上郡戸沢村古口落差120m
七ツ滝(ななつたき)山形県鶴岡市大字田麦俣字七ツ滝落差90m
乙字ケ滝(おつじがたき)福島県須賀川市落差6m
三条の滝(さんじょうのたき)福島県南会津郡檜枝岐村字燧ケ岳落差100m、日本三大名瀑
銚子ケ滝(ちょうしがたき)福島県郡山市熱海町落差48m

関東地方日本の滝百選一覧

名称(読み)所在地備考
袋田の滝(ふくろだのたき)茨城県久慈郡大子町袋田落差120m、日本三大名瀑
華厳滝(けごんたき)栃木県日光市落差97m、日本三大名瀑、日本三大神滝、華厳の滝とも
霧降の滝(きりふりのたき)栃木県日光市所野落差75m
吹割の滝(ふきわれのたき)群馬県沼田市利根町追貝落差7m
常布の滝(じょうふのたき)群馬県吾妻郡草津町落差40m
棚下の不動滝(たなしたふどうたき)群馬県渋川市赤城町棚下落差37m、不動滝とも
丸神の滝(まるがみのたき)埼玉県秩父郡小鹿野町両神小森落差76m、丸神の蒲とも
払沢の滝(ほっさわのたき)東京都西多摩郡檜原村落差60m
早戸大滝(はやとおおたき)神奈川県相模原市緑区鳥屋落差50m
洒水の滝(しゃすいのたき)神奈川県足柄上郡山北町平山地内落差69m、名水百選

中部地方日本の滝百選一覧

名称(読み)所在地備考
七ツ釜五段の滝(ななつがまごだんのたき)山梨県山梨市落差20~30m
北精進ケ滝(きたしょうじがたき)山梨県北杜市武川町黒澤落差121~180m
仙娥滝(せんがたき)山梨県甲府市猪狩町落差30m
鈴ヶ滝(すずかたき)新潟県村上市落差55m
苗名滝(なえなたき)新潟県妙高市杉野沢落差55m
惣滝(そうたき)新潟県妙高市(燕温泉)地先落差80m
称名滝(しょうみょうだき)富山県中新川郡立山町落差350m、日本三大名瀑、日本の音風景100選
姥ケ滝(うばがたき)石川県白山市落差111m
龍双ケ滝(りゅうそうがたき)福井県今立郡池田町落差60m
米子大瀑布(よなこだいばくふ)長野県須坂市米子落差75~80m
三本滝(さんぼんだき)長野県松本市安曇地区落差50m
田立の滝(ただちのたき)長野県木曽郡南木曽町落差40m
根尾の滝(ねおのたき)岐阜県下呂市小坂町落合落差63m
平湯大滝(ひらゆおおたき)岐阜県高山市奥飛騨温泉郷平湯落差64m
養老の滝(ようろうのたき)岐阜県養老郡養老町養老公園落差32m、名水百選
阿弥陀ケ滝(あみだがたき)岐阜県郡上市白鳥町前谷落差60m
安倍の大滝(あべのおおたき)静岡県静岡市葵区落差80m、日本三大名瀑、駿河大滝・乙女の滝とも
浄蓮の滝(じょうれんのたき)静岡県伊豆市湯ヶ島落差25m
白糸の滝・音止めの滝(しらいとのたき・おとどめのたき)静岡県富士宮市落差20m、日本三大名瀑・落差25m
阿寺の七滝(あてらのななたき)愛知県新城市下吉田落差26m

近畿地方日本の滝百選一覧

名称(読み)所在地備考
布引の滝(ぬのびきのたき)三重県熊野市落差53m
赤目四十八滝(あかめしじゅうはちたき)三重県名張市赤目町落差30m(布曳滝)、森林浴の森百選、遊歩百選、平成の名水百選
七ツ釜滝(ななつがまだき)三重県多気郡大台町落差120m
八ツ淵の滝(やつぶちのたき)滋賀県高島市鹿ヶ瀬落差30m(貴船の滝)
金引の滝(かなびきのたき)京都府宮津市滝馬落差40m
箕面滝(みのおたき)大阪府箕面市落差33m
原不動滝(はらふどうだき)兵庫県宍粟市落差88m
猿尾滝(さるおだき)兵庫県美方郡香美町村岡区落差60m
天滝(てんだき)兵庫県養父市落差98m
布引の滝(ぬのびきのたき)兵庫県神戸市中央区落差43m、日本三大名瀑、日本三大神滝
双門の滝(そうもんのたき)奈良県吉野郡天川村落差70m、三大難攻滝
不動七重の滝(ふどうななえのたき)奈良県吉野郡下北山村落差100m
笹の滝(ささのたき)奈良県吉野郡十津川村大字内原落差32m
中の滝(なかのたき)奈良県吉野郡上北山村落差250m
那智滝(なちのたき)和歌山県東牟婁郡那智勝浦町落差133m、日本三大名瀑、日本三大神滝
桑ノ木の滝(くわのきのたき)和歌山県新宮市落差21m
八草の滝(はそのたき)和歌山県西牟婁郡白浜町落差22m

中国地方日本の滝百選一覧

名称(読み)所在地備考
大山滝(だいせんたき)鳥取県東伯郡琴浦町野井倉落差42m
雨滝(あめだき)鳥取県鳥取市国府町落差40m
壇鏡の滝(だんぎょうのたき)島根県隠岐郡隠岐の島町落差40m、名水百選
龍頭八重滝(りゅうずやえだき)島根県雲南市掛合町落差40m(龍頭ヶ滝)、龍頭ヶ滝及び八重滝の総称
神庭の滝(かんばのたき)岡山県真庭市落差110m、日本百景
常清滝(じょうせいだき)広島県三次市作木町下作木落差126m
寂地峡五竜の滝(じゃくちごりゅうのたき)山口県岩国市錦町宇佐落差14m(龍頭の滝)

四国地方日本の滝百選一覧

名称(読み)所在地備考
大釜の滝(おおがまのたき)徳島県那賀郡那賀町落差20m
轟九十九滝(とどろきくじゅうくたき)徳島県海陽町平井王余魚谷落差58m(本滝)
雨乞の滝(あまごいのたき)徳島県名西郡神山町落差45m(雌滝)
雪輪の滝(ゆきわのたき)愛媛県宇和島市野川落差300m
御来光の滝(ごらいこうのたき)愛媛県上浮穴郡久万高原町落差102m、三大難攻滝
龍王の滝(りゅうおうのたき)高知県長岡郡大豊町佐賀山落差20m
轟の滝(とどろのたき)高知県香美市香北町落差83m
大樽の滝(おおたるのたき)高知県高岡郡越知町山室字大樽落差34m

九州・沖縄地方日本の滝百選一覧

名称(読み)所在地備考
観音の滝(かんのんのたき)佐賀県唐津市七山滝川落差45m
見帰りの滝(みかえりのたき)佐賀県唐津市相知町伊岐佐落差100m
四十三万滝(よんじゅうさんまんだき)熊本県菊池市落差15m
栴檀轟の滝(せんだんとどろのたき)熊本県八代市泉町柿迫落差70m
数鹿流ヶ滝(すがるがたき)熊本県阿蘇郡南阿蘇村立野落差60m
鹿目の滝(かなめのたき)熊本県人吉市落差36m、鹿目八重滝とも
東椎屋の滝(ひがししいやのたき)大分県宇佐市安心院町落差85m、九州華厳の別名も
原尻の滝(はらじりのたき)大分県豊後大野市緒方町原尻落差20m、東洋のナイアガラとも
震動の滝(しんどうのたき)大分県玖珠郡九重町落差83m(雄滝)
西椎屋の滝(にししいやのたき)大分県玖珠郡玖珠町・宇佐市落差83m
関之尾滝(せきのおのたき)宮崎県都城市関之尾町落差18m(大滝)
矢研の滝(やとぎのたき)宮崎県児湯郡都農町尾鈴落差73m
行縢の滝(むかばきのたき)宮崎県延岡市行縢町落差77m
真名井の滝(まないのたき)宮崎県西臼杵郡高千穂町落差17m
龍門滝(りゅうもんだき)鹿児島県姶良市加治木町落差46m
大川の滝(おおこのたき)鹿児島県熊毛郡屋久島町栗生落差88m
マリユドゥの滝(マリユドゥのたき)沖縄県八重山郡竹富町上原落差16m

日本の滝百選の雜錄と註

遊歩道や展望台などが設置され観光地化されている場所もある一方で、地形的な理由などにより観瀑が難しい滝もある。
また、自然災害等で橋や道路が通行止めになることがあるので、観光の際は注意していただきたい。

== 註 ==

※1 日本三大名瀑と呼ばれる滝は那智滝、華厳滝が定番で、後の一つは諸説あり。

※2 滝までのアプローチが険しく、滝見に行くのが難しいと言われる茶釜の滝(秋田県鹿角市八幡平地区)、双門の滝(奈良県吉野郡天川村)、御来光の滝(愛媛県上浮穴郡久万高原町)を三大難攻滝とも云う。

※3 選考作業では地元米沢市がアクセスの容易さ・観覧しやすさ等の理由から白布温泉付近の白布大滝を推薦したが、選考委員の推薦による滑川大滝が選定された。その経緯もあってか行政側の滑川大滝に対する扱いはおざなりだったとの指摘もある。
 2015年には大滝展望台に通じる唯一の道である吊り橋が老朽化のために閉鎖され観瀑が困難になっていたが、吊り橋修理のクラウドファンディングが地元旅館「福島屋」によって開始され、2022年4月頃に修理予定。

== 参考 ==

◎グリーンルネッサンス事務局[編]『日本の滝100選』講談社
現代における風景に関する百選の展開と選定地の変遷 伊藤いずみ
◎Wikipedia

タイトルとURLをコピーしました